創業53年、家族経営の小さな民宿。
女将・良江と、これからの代と。
福井県三方郡美浜町日向。
日向湖と若狭湾の背中合わせの漁村集落に、
またべゑは静かに建っています。
創業は昭和48年4月18日、
2026年で53年を迎える、
全5部屋の家族経営の小さな民宿です。
「一度行ったらまた行きたくなる宿」を合言葉に、半世紀あまり、漁師町の暮らしと旅の方をつないできました。

女将の良江は、
隣町から親御さんの紹介で
20歳のときに日向へ嫁ぎました。
それまでは京都の電気屋さんでお手伝いをしていて、
ご飯の炊き方も知らない若さでした。
はじめて見た日向の漁師町は、
言葉づかいの荒々しさに驚いたといいます。
船から丘へ、丘から船へ、
大きな声が往き来する。
「日常の会話さえ、
喧嘩しているみたいに聞こえた」と、
女将は当時を笑いながら振り返ります。
嫁いで間もない頃、
またべゑはまだ民宿ではありませんでした。
漁師だったご主人がたくさんの魚を獲り、
釣りに来るお客さんから
「泊めてほしい」と
頼まれることが続いて、
自然と民宿を始めるようになったのです。
最初は7〜8人しか泊まれない、小さな民宿でした。
少しずつお客様が増えて、
そろそろ建て替えようかと話していた17年前。
ご主人は73歳で他界しました。
「人生終わりや」と思ったといいます。
けれど女将は、
宿を続けることを選びました。
「市場で魚の仕入れも自分でできる。
なにより、常連さんがいてくれるから」と、
女将は言います。
常連さんなんて、
また来てやと言わんでも来るねん。
大きな儲けじゃなくていい。
食べていけるだけの少しの儲けと、
お客様との会話と
ふれあいに支えられているから、
生きていける。

またべゑの名物・自家製へしこ。
ご主人を亡くしてから、
女将が一つひとつ手をかけて仕込みはじめました。
「楽しみながらやっているの」と良江は言います。
発酵された鯖の深い旨み、
女将の想いがこもった一品です。

仲間とお客様に支えられて17年。
次代の女将として、
息子の妻が跡を継ぐことになりました。
これからは、母と嫁、
ふたりで皆様をお迎えします。
変わるところ、変わらないところ。またべゑのものがたりは、これからも続きます。
※女将のお話は 「美浜においで」インタビュー記事より引用しています。